2013.07.20~07.27  ピッツ・ベルニナ、ビアンコ・グラート(4049m)&グラン・パラディソ(4061m)

2013.07.2007.27  Biancograt ,Piz Bernina(4049m)&Gran Paradiso(4061m) スイス・イタリアアルプス駆け足登山

参加者:U,N

Biancogratは、近藤等氏がその著書“我回想のアルプス”の中で、アルプス珠玉の10ルートの一つとして紹介しているルートである。その本の中で、このルートをヘルマンブールの言葉を引用して、“アルプスのあらゆる氷の山稜のうちでもっとも豪壮な稜線”と表している。またガイドブックなどでは、 ’Himmelsleiter’ (天国への梯子)とも表現されている。登攀後知ったことだが、NHKグレートサミッツシリーズでも紹介されたルートだった。昨夏のPizBadileの登攀後、このルートのことを知っていたが、今夏のヨーロッパの登攀対象としては仕事の関係から7月渡欧とスケジュールが決まってから登攀対象となった。つまり、積雪があっても登れるとの対象からである。結果、TheAlpinClubのガイドブックのページをコピーしてザックに詰め込んだだけのぶっつけ本番だった。

7/19 夜Milan Linate空港着

7/20 Milan中心地に近いLinate空港からレンタカーで昨夏から馴染みのスイス国境Chiavannaへ向かう。さらに国境を越えPizBadileの入り口の村Soglioを通過する。PizBadileの北東壁には雪が付着している。登攀には未だ早いのだろう。

s-2013-07-20 16.56.38     昨年登攀したPizBadileには雪が残っている。

曲がりくねる急坂道を登ると、バブリーな町ST.Moritzを通り抜けRoseg渓谷の町Pontoresiaへ。駅近くでの長期駐車場を探ししばしうろうろする。一日8ユーロの駐車場で3日分を払い、昼食を食べずに歩きはじめる。1時間程度と考えていたHotelRosegへの散歩道はそれ以上、Hotelはルートから少々はずれているので結局昼飯抜きとなった。空腹、時差ボケと飛行機疲れ、2583mのTschierva hutへやっと到着。それでも200mほど登って明日の偵察。

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PontresinaよりRosegの谷を歩いていきます。一般の車は通行止め。Hotel Rosegの車か馬車だけが通行可能です。

DSC00633  Roseg渓谷から左に分かれ、Tschierva渓谷へ入っていきます。正面の山がPizBernina。白い稜線がbiancogratです。胸が高鳴ってきました。

DSC00635       Biancogratの全貌が見えてきました。傾斜が無いとなめる気持ちも。

1-DSC00638       TschiervaHut(2583m)スイス山岳会の小屋です。

1-DSC00640     小屋近くの標識。朝の暗いときにはこれさえも見落とすことがあります。

 

7/21 4:15 Tschierva小屋

16:05PizBernina山頂

18:30MarcoRosa小屋

Biancograt組は3:00朝食とのことだった。2:00起床の予定だった。物凄い雷と雨音で起こされる。これは駄目だとあきらめて寝なおす。雨も小降りになると皆居なくなる。あわてて起きるともう小雨の中出かける連中、その中に小屋専属のガイドパーティも。軽い食事をあわてて済ませ、4:15小屋を出るが先行するヘッドランプは遥か上にある。もう、ルートは自力で探るしかなかった。Tschierva氷河の右岸を登っていくが、PizMorteratschへ登るトレールとの分かれ道までは明瞭だった。しかし、崩れたガリーにより踏み跡が分断される地点では、危ないがガレ場の下降、難しい登り返しで踏み跡に戻れたが新しい足跡はなかった。恐らく早い時点で下から回避しているのだろう。その後も入り込む雪渓によりルートが判然としない。早く右下のTchierva氷河へ降りたいのだがなかなか降りることが出来ない。取り付き敗退の悪夢がチラチラと。それでも、なんとかPizMorteratschとPizBerninaの山稜の最低コルから落ちる氷河の底へ降りることができた。ここで先行する数パーティを認識できた。クランポンを付け氷河を登り始めて暫くすると赤白のRegaの救助ヘリが爆音とともに飛来した。上部の急な雪壁の部分で暫くホバリング、下部の平らな氷河で赤いウエアーの救助隊員を1名降ろした。上部の急な雪壁を先行の3名が降り始めた。1時間も先行しているパーティがなぜ下降しているのか、平らなところでヘリに拾ってもらうのか?遅れて出てきた我々は何か気が引けてしまう。救助隊員に“行くよ。”と手で合図して、続行すると元気そうな3名とすれ違う。“What happened?”聞いても返事せず、不機嫌そうに降りていった。そうする内に下部で待機していたヘリが上部へ隊員をぶら下げたままで飛行、あっという間に上部に残っていた1名をhoist、さらに旋回して1名をhoistした。鮮やかな操縦技術、ほとんどホバリングしない。我々もRegaに加入していて良かったなと再認識。30分ほどコルまでの急斜面を登っていると、更にRegaが飛来、我々の横で旋回する。手を振ったら我々をも救助する勢いだったので無視を決め込んだ。余程遅いと思われ退避勧告だったかもしれない。

1-DSC00642     Tschierva氷河にやっと降りることができました。右岸の下部をへった方が簡単だったかもしれません。取り付き敗退から解放されました。

1-DSC00646     Regaのヘリが飛来。何事か訳がわかりません。ヘリは飛んでいます。氷河の大きさがわかります。一の倉沢とは違います。

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Regaの隊員が氷河に降り立ちました。恰好よすぎで見とれてしまいました。

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遭難者をHoistするRega。

MorteratschとBerninaのコルに達すると反対側に大きなMorteratsch氷河が広がり、稜線には大きな岩峰が立ちはだかる。ルートガイドを確かめればよかったのだが、左側の踏み跡を辿ってしまった。踏み跡らしきを頼りに左側を捲いていくがキレ落ちていて失敗は許されない。おまけに脆い岩。恐る恐るしばらく進むが、残置類は1本も無い。Nの冷静な「引き返しましょう」との意見にガイドブックを読み直す。コルから右に進み、稜線の頭通しに登るとあった。コルまで引き返すが1時間近くのロスだった。コルから右に進むと、要所要所に立派なハンガーボルトがある、3級程度までの岩登りなので、プロテクションは殆ど必要無いが安心して登れる。極めて安定した頂稜を快適に登って行くと上で声がする。ビレーポイントのイタリア人に、“accent or decent?”と聞くと、登っていると上を指す。まだ、遅いパーティがいたと思うとなぜかホッとした。若い女性と50位のおじさんのパーティで女性がリードしている。全てスタカットの2人を同時登攀で追い抜いた。ここで、上部のBiancogratと呼ばれる白い稜線が一望できる。4人で思わず感激の叫び。白い稜線が空へ伸びていた。まさに天国への梯子だ。

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コルからの岩峰は右側からまき気味に入り、あとは頂稜を狙って登る。堅い安定した岩が続きクライミングを楽しめた。

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左側をまいた時の不安定な岩が嘘のような堅い岩でした。

1-DSC00662     登頂後の早い下山組と思っていました。Milanのお嬢さんとSondorioのおじさんパーティに追いつきました。

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ここでBiancogratの白い稜線が目前に見えました。感激でした。

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更に頂稜伝いに岩登りが続きます。

さらに、岩の頂稜を進むが、ここは左側を捲いた方が早かったかもしれない。最後は20mほどの懸垂で左側の雪壁に降り立ちそこからがBiancogratの登りとなった。雪が柔らかく難しくはないが、とにかく長い。高山の影響もあり、時差ボケの我々のペースは遅い、上部では硬い氷も現れ、アックスを打ち込みながらの登攀となる。何度も偽ピークに騙されながらPizBiancoと呼ばれる、Berninaの前のピークに立った。そこからまた標高差150mほどの岩稜を登り降りしなければならない。その頃には天気が悪化、視界も悪くなり、雷鳴が聞こえ始めた。我々のもっている、ザックに突き刺してあるカーボンポールが震え始める、カーボンシャフトのアックスもビリビリする。 細く逃げ場のない岩稜だが、ギヤ類を外し出来るだけ遠ざけて暫くの退避。雷雲にすっかり囲まれたらしい。カーボンシャフトのブーンと言う音が収まり雷雲が遠ざかったようなので頂稜を進み懸垂でBernina山頂へ向かう最後の岩場のコルへ。北鎌から槍の穂先へ登る程度の岩場だったが、また、カーボン類が一斉に唸りはじめる。あわてて全ての金物を遠ざける。5mほど避けるのがやっとの稜線だったので気休めだったかもしれない。かなりの長時間の退避だった。簡単な最後の岩場を登ると頂上の稜線へ出る。頂上には十字架も何もない。何処か一番高そうなところを選び写真を撮り、逃げるように頂上を後にする。400m程下のMarcoRosa小屋まで暗くなる前に下らなければならない。暗くなれば小屋の位置をつかめないかもしれない。一般ルートであるが途中の懸垂支点ではカラビナがあり、ロワーダウン&トップロープダウンを繰り返し懸垂の時間をセーブする。最後の下りの雪壁、下は平で柔らかい雪だったが、固い氷の急な下りトラバースでNが15m程滑落。本人によると寒さで頭がふらふらし毛糸の帽子を被ろうかと迷っていたそうだ。下に小屋が見えていた油断と何よりやはり頭を冷やすのはまずい。凍った斜面だったが下のフカフカ雪に軟着陸した。あとは上から見えたMarcoRosa小屋へ向かって雪原を歩くだけだった。暗かったら小屋の位置はわからなかったかもしれない。小屋は予約していなかったが、快く迎え入れてもらえた。19時の食事の時間には良いタイミングだった。途中追い抜いた2人はベットに倒れこむ頃も来なかった。小屋も心配していたが22時過ぎに到着したとのことだった。

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岩峰より懸垂で降りBiancogratの始まりです。左のトレースは岩峰を左にまいた先行者のもの。

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憧れのBiancogratの上です。

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思ったよりも長い雪稜でした。上部は氷結アックスを打ち込んでの登攀でした。

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PizBiancoとも言われるピークの先にPizBerninaの本峰が続きます。このあたりから天候が悪化しました。まだ、先は長い。

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Bernina本峰への岩登りが続きます。なんでもスケールが大きく長い。

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幾つかピークがありますが、何もないBerninaの山頂。

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寒いし、雷が怖い。短い山頂でした。

 

7/22

朝、夜遅く着いた2人と遅い食事、23時過ぎに就寝したとは思えない元気さで、明るいミラネーゼとおじさんだった。PizPaluへ縦走するという2人と途中まで一緒。我々はフォルテッツ稜を下る。途中3度ほど懸垂支点でロアーダウン。ルートがわかっていればクライミングダウンできるだろう。とてつもなく広い氷河を渡りの展望台へ向かう。氷河はクレバスが多数あり、雪質も不安定で歩きにくい。最後のDiavolezzaへの登り返しが最悪だった。標高差400mほどの登り返し。黒四ダムの登り返しを思い出すが遥かに長い。すっかり嫌になりながら展望台へたどり着くと日本人の観光客が多数いた。なぜ、こんなところにと不思議だったが、後で調べるとNHKグレートサミツの影響からではないかと推測された。一人20スイスフラン以上を払いロープウエイでありがたく山麓の駅へ。あとは、Pontresinaまで列車で戻り、勝手知ったるイタリア側のChiavennaへ。

 

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MarcoRosa小屋よりフォルテッサ稜への下り。クレパスです。

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東側から見るPizBerninaは穏やかな山容です。右の稜線がBiancograt。

7/23

次は何処を登るか迷う。MonteCervino,Dentd’Heren、Liskamm,MonteBiancoなど岩登り対応装備をもっていないので雪山に限られる。結局Courmayerへ行きたくなったのでそちらへ向かう。Courmayerの町は観光客も少なく活気がない。MonteBiancoの景色も雲がかかりすっきりしない。Nも体調が戻らず、行く先は翌日の状況次第。

7/24

MonteBiancoの明日の予報は晴れだが山頂は風速25m。Nの体調も考慮、結局、比較的登りやすい、単独でも登れそうなGranParadisoへ向かうことにする。GranParadisoは国境線にない山としてはイタリアで一番高い山である。イタリア人にとっては憧れの人気の4000m峰らしいが同じような富士山よりはだいぶ難しい。Aosta郊外より、Pontというキャンプ場と駐車場へ。駐車場には沢山の車が駐車されている。VittoroEmannuelⅡ小屋へは明るい渓谷を歩くが高山植物に囲まれた素晴らしいトレッキングルート。子供連れも、若者も、肥満の人も、軍人も、さまざまな人が行きかう、しかしそれなりに急な登りもある。大きな金属製のカマボコ型の小屋の屋根裏部屋へ泊まるが思ったより快適だった。小屋は子供ずれ、若者も多いがスイス小屋のガツガツしたクライマーが幅を利かす雰囲気ではなく、のんびりしている。なぜか、アメリカ人が多い。夕食のTableで一人さびしそうなスペインの若者に声をかけるが、同席のオランダ人の通訳でやっとコミュニケーションできる。単独だからParadisoへは行かないとのことだったの一緒に登らないかと誘った。Montura着ている位だからそこそこ登れるだろうと思った。

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Pontの駐車場。キャンプ場もあり賑わっています。

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Emanuel小屋までのトレッキングルートは明るく気持ちが良い。後ろの山はParadisoではありません。

1-DSC00685     かまぼこ型の大きな小屋でした。

1-IMG_1196     天井の低い屋根裏大部屋は意外と快適でした。値段も安く32ユーロ/人。

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四谷デナリのクランポンケースに乾杯!

7/25

4;35VittroEmanuelⅡ小屋

9:30GranParadiso山頂

11:00VittroEmanuel小屋

Nは結局調子が悪く小屋待機、Pablo君と二人で登ることになった。暗い中、出だしから、反対の方向へ行こうと主張するPablo。前日ガイドに確かめていたので強引に連れていく。雪渓まで左に回り込みながら進む。1時間ほどで雪渓に出てひたすら雪壁を登る。途中、アンザイレンするがPabloは変なロープの結び方をする。どうやら外れそうもないのでそのままにする。Ropeくらいの単語しか通じないので説明するのはあきらめた。最後、多少急な雪壁を左に回り込み大きな岩の露出する頂上へ。風が強く、毛糸の手袋にオーバー手袋を使うほどの寒さだった。見えるはずの国境アルプス方面の景色は見えない。頂上のPabloは大喜び、その後もハイテンションだった。すべてスペイン語で全く理解できない。しかし、連れてきて良かったと納得。頂上からの下り、細い岩場は、登ってくる登山者で交通渋滞.する。 5,6人目の登頂だったので渋滞を素早くぬけ雪壁を駆け下りEmanuel小屋へ。

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Paradisoへの登り。

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右上が頂上と思っていましたが、頂上は左上でした。

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頂上の岩場より登ってきた雪原を望む。

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マリア像? 狭い頂上は混雑。

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Pabloの飛び切りの笑顔。テンション高いまま下山。でも、ロープの巻き方が危ない。

Pontへは珍しく高山植物を観察しながらのんびり下る。AostaではMonturaの充実したshopへ寄り、Chervinia泊まり。

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ピンクのエーデルワイス?

7/26

民宿の息子Marcoはクライマーで色々話した。モンブランのInnominette稜を3度登ったなど話していた。Innominetteは自分の夢である。またBiancogratはLion稜と同レベルのルートと聞き納得した。PlateauRosaへロープウエイを使って上がったが、スキーヤーがたくさんで別世界だった。MonteCervinoは雲がかかって見えない。しかしLion稜のCarrel小屋へ至るガリーは雪で埋まっており大変そうに見えた。

Linate空港近く泊まり。高速が混んでおり苦労した。

7/27

Linate発成田へ。

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